ナビ派をわかりやすく解説

今回は19世紀末のパリに登場したナビ派の芸術について解説したいと思います。

目次

ナビ派とは?

19世紀末のパリ、印象派のあとに登場した若い芸術家たちが、自分たちの新しい方向性を探していました。

彼らは自らを「ナビ派(Les Nabis)」と呼び始めました。

「ナビ」とはヘブライ語で「預言者」という意味です。彼らは芸術を通じて新しい時代の表現を切り開こうとしました。

ナビ派の特徴

写実ではなく、装飾性・象徴性を重視し、平面的で色彩豊かな表現が特徴です。

日常の風景や人物に、詩的な雰囲気が感じられる絵画が多いです。

宗教的・精神的なテーマも多く扱われています。

ナビ派の作品は、画家が見た現実をそのまま描くのではなく、心の中にある「意味」や「感情」を大切に、絵画で表現しています。

ナビ派の代表的な画家

モーリス・ドニ

ナビ派の理論家

モーリス・ドニ(1870-1943)は、ナビ派の中でも特に思想的な役割を担った画家です。

彼は20歳の頃に有名な言葉を残しました。

「絵画とは、戦争の馬や裸婦、あるいは何かの逸話を描いたものの前に、

色彩で秩序づけられた平らな表面である。」

この言葉は、のちの抽象絵画や現代アートに大きな影響を与えました。

モーリス・ドニの絵画の特徴

  • パステルのようなやさしい色合い
  • 宗教的・精神的なテーマ
  • 装飾的で平面的な構図

彼は「芸術は信仰であり、日常を美で満たすもの」と信じていました。

ピエール・ボナール

鮮やかな色彩で日常の親しい風景を描いた。

「ナビ・ジャポナール(日本趣味のナビ)」と呼ばれ、日本美術に影響を受けました。

エドゥアール・ヴュイヤール

家庭的な室内を好んで描いた画家。模様や壁紙が画面全体を覆い、独特の温かさがあります。

ポール・セリュジエ

ナビ派結成のきっかけを作った人物。

ゴーガンの影響を受けて、鮮やかで象徴的な色彩を追求しました。

ナビ派の画家の特徴

ナビ派は全員が同じスタイルだったわけではなく、それぞれが独自の個性を持ちながらも、「絵画は精神的な表現である」という共通の考えでつながっていました。

ナビ派の絵画に出会える場所

パリにはナビ派の絵画を鑑賞できる美術館がいくつもあります。

オルセー美術館(パリ)

ドニ、ボナール、ヴュイヤールらの作品をまとめて観られます。印象派からポスト印象派への流れの中で、ナビ派を位置づけられます。

モーリス・ドニ美術館(サン=ジェルマン=アン=レー)

パリ郊外にドニの旧宅を改装した美術館があります。壁画や家具、庭園まで彼の芸術世界を体感できます。

プティ・パレ美術館(パリ)

無料で入れる市立美術館。ナビ派の装飾的な側面を感じる作品も収蔵。

ナビ派を楽しむための鑑賞ポイント

色の使い方に注目する

☑ 写実的ではなく、感情や雰囲気を表す色が多い

☑ 「実際の風景より少し明るい」「夢の中のように柔らかい」印象を感じ取る

平面的な構図を探してみる

☑ 遠近法よりも模様や形のリズムが優先されている

☑ 日本の浮世絵のように、画面がフラットに見えることも

日常がどんな風に描かれているか

☑ 家庭や街の風景が詩的に、物語のように表現されている

☑ 「普通の場面をこんな風に美しく描くんだ!」という驚きを楽しむ

宗教や精神的なテーマに触れてみる

☑ モーリス・ドニの作品は宗教的なシーンや祈りの雰囲気を感じさせる

☑ 難しく考えず、「静かで落ち着く」気分を味わうのがおすすめ

装飾性を見つける

☑ 壁紙や布、木々や草花などの模様の繰り返しに注目

☑ 部屋のインテリアや建物の装飾のように、「絵が空間を飾るもの」だと意識してみる

初めて見るときのコツ

「意味」を考えるより、色・雰囲気・リズムを感じてみてください。

「この色づかい好きだな」「ここに模様の工夫があるな」と、自分なりに観察してみるとより楽しい時間が過ごせると思います。

ナビ派の絵画のまとめ

ナビ派は「新しい芸術の預言者」として19世紀末のパリに登場しました。

写実を超えて、色・形・精神性を重視した絵画が特徴で、後のモダンアートへ影響を与えました。

ナビ派の絵は難しい理論を知らなくても、ただ「色が美しい」「夢のようにやさしい」と感じられるのが魅力です。

パリを訪れた際にはぜひ美術館に足を運び、ナビ派の絵画を鑑賞してみてください。

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この記事を書いた人

30代のトリリンガル。フランスの国立大学の歴史学部に在学中。翻訳者と日本語講師もしています。当ブログでは、フランスの旅行・歴史・語学に関する情報を配信しています。海外一人旅歴18年。これまでに30カ国・100都市以上を巡る。フランスは60以上の街や村を訪問。

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